「誹謗中傷ホットライン」立ち上げへ。誹謗中傷の被害者やプロバイダからの相談に対処。

ニュース

【この記事はIT系ライター M氏 が書きました】

ネット起業からなるセーファーインターネット協会からアナウンス

ヤフー株式会社、ピットクルー株式会社、株式会社ミクシィ、株式会社メルカリなどの企業からなる
一般社団法人セーファーインターネット協会(Safer Internet Association, 以下 SIA)は
インターネット上で誹謗中傷を受けた被害者、投稿の削除と発信者情報の開示の対応に苦慮している
プロバイダの双方から相談を受け付ける「誹謗中傷ホットライン」の設立を発表しました。

SNSにおける誹謗中傷により繰り返される痛ましい出来事による社会問題化

SNSでは不特定多数の誹謗中傷により追い込まれた被害者による悲しく痛ましい出来事が度々発生し社会問題化しており、
国や企業、支援団体等が再発防止に向けた取り組みを強化しています。

SIAでは過去にも警察庁からの委託事業として「ホットラインセンター」を設立し、関係省庁と連携し
児童ポルノや、リベンジポルノ、ネット上でのいじめなど人権を侵害する投稿への対応を行っています。
こういった対応は被害者からの相談を受け、投稿された内容が各SNS等のサービス規約に抵触していると判断された場合に
SIAからの削除要請という形で行われており、新たに誕生する誹謗中傷ホットラインも同様の流れで進められるとのことです。

SIA セーフライン運用ガイドライン

海外に拠点を持つSNSの場合、日本語での削除要請受付の窓口が存在せず、英語のみの場合もあるなど
削除要請の難しさが問題に挙げられますが、SIAにはそういった際にもリベンジポルノ等の削除要請を
行ってきた経験があり、誹謗中傷ホットラインに活用が期待されます。

SIA 誹謗中傷ホットライン立ち上げ リリース文

表現の自由と通信の秘密。対応に苦慮するプロバイダ

SNSへの誹謗中傷による痛ましい事件は後を絶たず、被害者の救済のためには
加害者の情報を開示、投稿の削除といった対応が必要なのは明白ではありますが、
通信の秘密と表現の自由とのバランスの取れた判断がプロバイダーに求められます。
誹謗中傷ホットラインは第三者機関としてプロバイダーからの相談に応じ、投稿の削除や
加害者の情報の任意開示の促進する役割を担うとしています。

通信の秘密・・・個人間の通信(信書、電話、電波、電子メールなど)の内容及び関連した全ての次項に関して
公権力や通信当事者以外の第三者がこれを把握すること、および知り得たことを他者に漏らすことを禁止すること。
憲法第21条で定められています。従来は信書(手紙やハガキ、封書)について定められたものでしたが、
今日では電波、電報、電話、電子メール、インスタントメッセージなどを含んだ広い意味で理解されています。

SNSやブログサイト運営側がユーザー間のメッセージや投稿のやり取りを監視し削除の対応を取ることは通信の秘密の権利を
害する可能性もあると指摘される場合もあるのが実情です。

表現の自由・・・全ての見解を検閲されたり規制されることもなく表明する権利。思想・意見・主張・感情を表現し、発表する自由。
個人、報道、出版、放送、映画による自由を含んでいます。同じく憲法第21条で定められています。
ただし、公共の福祉を侵害したり、他社の自由を侵害するものについては認められていません。
誰でも自由に発言できるのがSNSの魅力の一つではありますが、個人の思想による発言が他者にとっては不快に感じる場合もあり、
自由と侵害の線引きが曖昧になるケースがあります。また過度な制限をユーザーに強いれば言論・思想の制限に繋がりかねないと危惧する声もあります。

SNS各社にも問題解決への動き。

SNS各社にも問題解決に動き出しています。ByteDance、Facebook Japan、LINE、Twitter Japanなどが中心となっている、
一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構(SMAJ)はSNSでの課題に対応する他人への嫌がらせ、
個人に対する名誉棄損などを意図したコンテンツの投稿を禁止することを発表しました。

ソーシャルメディア利用環境整備機構 声明ロゴ

インターネットやSNS利用者の表現の自由や通信の秘密の保護などを最大限に尊重しつつ、
必要かつ効果的な取り組みを実施し、今後のさらなる対策を検討するためにSMAJ全理事をメンバーとした
特別委員会を設置。他人への嫌がらせや、個人に対する名誉棄損、侮辱を含んだ投稿を禁止し、
サービスの利用規約に記載し啓発広報を実施することや、禁止事項に該当するユーザーのサービス利用停止など
必要な措置を徹底するとしています。

捜査機関やプロバイダ責任制限法による情報開示の要請があれば、法令に基づき適切な範囲で情報を提供することも
表明しています。

ソーシャルメディア利用環境整備機構 リリース文

SNSの被害者、加害者にならないように。消せないデジタルタトゥー。

健全なSNSの実現に向けた動きが加速はいますが、前提としてサービスを利用するユーザーの意識こそが重要であることは言うまでもありません。
誰もが自由に投稿を行えるSNSやブログ等では普段の生活では面と向かって言えないような発言を安易に投稿してしまうことがあります。
当人にとっては当たり前であると感じたことも、他社によってはまったく違う形で受け取られる可能性があります。
また、他社の投稿の真偽を確かめずに謝った情報を拡散してしまうことも結果として加害者に加担することに繋がります。
自身の投稿、拡散する際はそれが適切なものなのかどうかを常に意識するようにしましょう。

また、ひとたびインターネット上に公開された書き込みや個人情報、写真などは一度拡散してしまうと、投稿した本人の意図に反して
複製を繰り返され、結果として完全に削除されることは難しくなります。それらは入れ墨になぞらえてデジタルタトゥーと表現され、
第三者に悪用される可能性を持っています。特に未成年者が家族にいる時はSNSとの付き合い方を話し合い、万が一、
自らや家族が被害者となった場合は個人ですべてを抱えこまずに自治体や警察の各相談窓口やIT関連の弁護士事務所などに相談するようにしましょう。
常日頃から適度な距離感を持ったSNSとの付き合い方を心掛けることが大事です。

関連リンク

◆総務省:国民のための情報セキュリティサイト
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/enduser/attention/03.html

◆警察庁:都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧
https://www.npa.go.jp/cyber/soudan.htm

タイトルとURLをコピーしました